銀(XAG/USD)価格は4月8日、77.31ドルで取引されている。12時間足チャートでカップ型パターンを形成中で、32%のブレイクアウトが見込まれ、3桁到達も射程圏内。
この展開は、米国とイランの停戦合意がブレント原油を15%下落させ、米ドル指数(DXY)が4月6日の高値から1.63%下落したことを受けての動きである。一般的に、ドル安は銀価格の上昇要因となる。銀が海外の買い手にとって割安になるため。こうしたマクロの追い風が本当にブレイクアウトにつながるかは、ハンドル部分の形成と先物市場の動きによる。
銀価格は3月中旬から12時間足チャートでカップパターンを描いている。丸みを帯びた底は3月下旬の調整局面で形成され、直近の反発でカップ本体は完成した。あとはハンドル部分を残すのみであり、77.73ドルの直近高値からの小幅な反落が、その形成を示唆する。
相場モメンタムを測る相対力指数(RSI)は、ハンドル形成の兆候を示す。3月9日から4月7日にかけて、価格はより低い高値をつけたが、RSIはより高い高値を記録した。これは隠れた弱気のダイバージェンスであり、ネックラインからの現在の反落が継続する可能性を示唆する。
より深いハンドル形成となっても、カップパターン自体が否定されるわけではない。ハンドルは上昇前に一時的な反落が入るのが一般的。焦点はその深さと、マクロ環境が銀にどれほどの下支えを与え、浅いハンドルで済むかである。
銀先物のフロント月とセカンド月(SIL1!−SIL2!)のスプレッドは現在-0.55で推移。これはコンタンゴと呼ばれる状況で、銀先物価格が直近価格より高水準で推移していることを示す。 つまり、現物の即時受け取り需要は高まっていない状況。
参考までに、このスプレッドは2月上旬に7.875、3月上旬に6.515まで拡大した。どちらも銀価格が急騰し、現物需要が逼迫していた時期である。そこから一気にマイナス圏まで低下したことで、切迫感が消失した現状を示す。
コンタンゴは上昇局面を完全に阻むものではないが、足元の動きは現物需給というよりマクロ要因が主導していることを示唆する。本格的なブレイクアウトには、スプレッドがゼロ付近に縮小、あるいはプラス転換し、現物需要が価格上昇に追いつく必要がある。
ただし、マクロポジションは急速に変化している。その背景にはドルやオプション市場の動きがある。
停戦合意はコモディティ価格全体の即座な再評価をもたらした。ブレント原油は15%下落。米国とイランの緊張緩和により、原油価格に乗っていた戦争リスクが剥落した格好だ。原油が下落すると、石油輸入国によるドル需要(ペトロダラー効果)が薄らぎ、短期的にドル安が進む。
DXYは4月6日高値から1.63%下落し、現在98.69で推移。0.382のテクニカルサポート水準上で推移している。この水準を下回れば、次のターゲットは98.09 、97.50となる。ドルが下落するたび、歴史的に銀価格には追い風となる。他通貨建てで見ると銀が割安になるため。
オプション市場も同様の変化を示す。iShares Silver Trust(SLV)のプット・コール比率は、4月6日の0.67から4月7日には0.47まで急低下。建玉比率も0.60から0.59へ低下。いずれも1.0を大きく下回っており、強気なコール買い優勢を示唆する。4月6日から7日にかけて比率が大きく下がったのは、停戦を受けて弱気ポジションが巻き戻されたため。
ドル安、原油安、強気なオプションポジションの揃い踏み。最後に決め手となるのが銀価格のチャートである。
シルバーは77.31ドルで取引されている。カップ型チャートのネックラインは77.29ドルから77.73ドルの間に位置している。12時間足で77.73ドルを上抜けて終値を付ければ、カップ型パターンのブレイクアウトが確定する。
ネックラインの上では、0.618水準の79.12ドルが最初の本格的な確認ゾーンとなる。79.12ドルを終値で上回れば、ブレイクアウトの成立が確実となり、目標はさらに上昇する。最初の主要ターゲットは85.07ドルとなる。勢いが続けば、1.618エクステンションの94.69ドル、そして32%の値幅予測である102.29ドル(100ドル超のゾーン)が視野に入る。
100ドル到達を現実的なものにするには、2つの条件を同時に満たす必要がある。ドル指数が98.69を下回る下落を続けること、現物需要の回復とともに先物コンタンゴが縮小することだ。この2つがそろわなければ、上昇は85ドル付近で頭打ちとなるリスクがある。
マクロ体制の転換期に表れるカップ型パターンには特有の注意点がある。もしマクロ要因が失われれば(例えば停戦が決裂したり、ドルが反発した場合など)、このパターンは確認されたブレイクアウトではなく、失敗したパターンへ転化する。RSIのダイバージェンスもすでにそのリスクを示唆している。
下値では、0.382水準の75.45ドルが最初のハンドルサポートとなる。より深いハンドル形成の場合は73.18ドルを試す展開となる。69.51ドルが重要な下値支持線であり、これを下抜けるとパターンは大きく崩れる。60.88ドルを割り込めば完全な無効化となる。
現時点では、77.73ドルがカップ型ブレイクアウト確定と85.07ドル、最終的に100ドルへの道を分ける分岐点であり、一方でハンドルの調整深掘りが73.18ドルと69.51ドルの下値支持線を試すシナリオをも示している。


