● 米主要銀行をめぐる新たなストレスを背景にドル・デリスキングが加速し、ビットコインは9万7000ドルまで急騰した。
● ビットコインデリバティブ市場では、24時間で新たに40億ドル相当の先物ポジションが積み上がった。
● レバレッジの拡大は上昇モメンタムを示唆する一方、ポジションの過熱は短期的な調整リスクも高めている。

ビットコイン建玉、現物上昇を上回る──米銀行セクター不安とドル・デリスキングに40億ドルを賭けるトレーダー

1月14日、ビットコイン価格は前日比4%上昇し、約60日ぶりとなる9万7000ドルに達した。11月14日以来の水準であり、米金融市場におけるマクロ環境の緊張が再び高まったことを受けた動きだ。

背景には、米銀行株の再度の売りがある。複数の銀行で損失が拡大していることに加え、トランプ政権がFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長をめぐって進める調査をめぐる政治的な不透明感が投資家心理を冷やした。

リスク回避の動きは米国株式市場に強く影響し、大型テック株は敬遠された。その結果、ドルのデリスキングが進み、投資家はコモディティや暗号資産(仮想通貨)といった代替的なヘッジ資産へと資金を移した。消費者物価指数(CPI)が好意的に受け止められた直後にもかかわらず起きた動きだ。

トランプ大統領がクレジットカード金利を10%に上限設定する計画を発表してから数日後、米銀行が発表した第4四半期決算を受け、圧力は一段と強まった。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、シティグループはロシア事業撤退に関連する12億ドルの損失を計上し、利益は前年同期比で13%減少した。ウェルズ・ファーゴも、6億1200万ドルの退職関連費用を計上した結果、利益は市場予想の124億6000万ドルを下回った。

一方、JPモルガン・チェースとバンク・オブ・アメリカは予想を上回る決算を発表したものの、前者では投資銀行手数料が5%減少するとの懸念から、両行とも株価は下落した。

米国株が下落するなか、金と銀には即座に資金が流入し、金は4610ドルを回復、銀は90ドルを超えて急騰した。ビットコインは週初には出遅れていたが、マクロ指標がハト派的な見通しを補強すると、再び有力なリスクヘッジ資産として選好されるようになった。

alt 〈ビットコイン・デリバティブ市場の取引データ|Coinglass〉

デリバティブデータを見ると、今回の上昇が主に投機によって主導されたことが確認できる。ビットコイン先物の取引高は35%増加して1160億ドルを突破し、建玉(オープン・インタレスト)は6.2%増の660億ドルに達した。これは、24時間で約40億ドル相当の新規先物ポジションが追加されたことを意味する。

建玉の増加率が、ビットコインの現物価格上昇率(4%)を上回っている点は、新たな投機的な動きが相場に与えた影響の大きさを示している。

建玉とは、決済されていない先物契約の総額を示す指標であり、増加は新たな資金が市場に流入していることを意味する。

また、ロング/ショート比率は記事執筆時点で1.06まで上昇しており、新規ポジションの大半が強気であることを裏付けている。

ビットコイン価格見通し:10万ドル目前、9万7800ドルに立ちはだかる2億3000万ドルのレジスタンス

ビットコインが心理的節目である10万ドルに迫るなか、Coinglassの清算マップは、強気ポジションが急速に積み上がっていることを示している。過去7日間で、ビットコインは週初に9万100ドルまで下落させていた弱気圧力を反転させた。ロングのレバレッジ総額は91億ドルに拡大する一方、直近2回の局地的な高値形成に伴う積極的なショート清算によって、弱気ポジションは13億ドルまで縮小している。

alt 〈ビットコイン清算マップ|Coinglass〉

清算マップ(Liq Map)とは、建玉、レバレッジ分布、過去の価格動向をもとに、清算リスクが集中している価格帯を示す指標のこと。

短期的なビットコイン価格見通しとしては、現在、最も大きな上値レジスタンスは9万7800ドルに位置している。この水準では、弱気筋が約2億3200万ドル相当のショートポジションを依然として保有している。記事執筆時点で日中の上昇が9万7750ドル付近で失速したことは、この水準を防衛しようとする動きが活発であることを裏付けている。

9万7800ドルを明確に上抜ければ、上方のレジスタンスは限定的となり、10万ドルに向けた急伸が引き起こされる可能性がある。

一方で、下振れリスクも無視できない。清算マップでは、週次ベースで強気ポジションの比率が90%を超えており、相場が過熱していることを示している。今回の上昇は、ドルのデリスキングやコモディティへの資金回転といった短期的なマクロ要因に大きく依存しており、ネガティブな見出し一つで急反転する可能性もある。

現物買いが投機的な資金流入に本格的に追いつくまでは、ビットコインは急激な調整に対して脆弱な状態にある。9万5000ドルを維持できない場合、市場は再び大きなボラティリティにさらされ、下方リスクが顕在化する可能性がある。


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