中国人民銀行(PBOC)が、暗号資産(仮想通貨)および現実世界資産(RWA)トークン化に関連する投機的活動への規制を強化する通知を2月6日に公表した。暗号資産やRWAトークン化を巡る投機的な煽り行為が経済金融秩序を乱し、国民の財産安全を脅かしているとして、中央政府レベルでの包括的なリスク防止・取締体制を明確化する方針だ。
今回の通知ではまず、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、テザー(USDT)などの暗号資産は法定通貨と同等の法的地位を持たないと改めて明言された。これらは非中央銀行発行であり、法的な強制通用力を持たず、市場で通貨として使用すべきではないとした。
また中国国内において、法定通貨と暗号資産の交換、暗号資産同士の交換、暗号資産取引の仲介・価格情報提供、トークン発行による資金調達(ICO)、暗号資産関連の金融商品取引などは、違法な金融活動に該当する可能性があるとして一律で厳格に禁止するという。海外の事業者や個人による、中国国内の主体に対する暗号資産関連サービス提供も禁じられた。
さらに法定通貨と連動するステーブルコインについても、流通過程で法定通貨の一部機能を代替していると指摘された。関係当局の承認がない人民元連動ステーブルコインの国外発行は禁止される。
また今回の通知では、RWAトークン化についても明確に言及されている。暗号技術や分散型台帳を用いて、資産の所有権や収益権をトークン化し、発行・取引する行為は、原則として違法な金融活動に該当し、禁止対象になるとされた。ただし関係当局の承認を受け、特定の金融インフラ上で行われる場合は例外になるという。
中国人民銀行は、国家発展改革委員会、公安部、国家市場監督管理総局、中国証券監督管理委員会(CSRC)など複数の省庁と連携し、暗号資産およびRWAトークン化に関するリスク監視・取締体制を強化すると説明。地方政府にも属地責任を課し、オンライン監視や資金フローの把握を通じて、関連活動を早期に検知・処理する仕組みを構築するとしている。
また金融機関や決済機関、ITサービス事業者に対しては、暗号資産関連業務および当局の承認を受けていないRWAトークン化事業について、口座開設、資金移動、清算、技術提供、広告・プロモーションなどの支援を行うことが禁止される。
企業登録においても、「暗号資産」、「ステーブルコイン」、「RWA」などの文言を名称や事業内容に含めることを認めない方針が示された。
一方で、中国国内金融機関の海外子会社や支店が、海外においてRWAのトークン化関連サービスを提供する場合については、法令に基づき慎重に実施することを条件に、一定の余地を残した。専門人材やシステムの整備、顧客審査や適合性管理、マネーロンダリング対策などを厳格に履行し、国内金融機関のコンプライアンスおよびリスク管理体制に組み入れることを求めている。
また国内主体が直接または間接的に海外で外債形式のRWAトークン化事業を行う場合や、国内資産・権利を基盤として海外で関連サービスを提供する場合には、関係当局への報告・承認・届出を含む厳格な監督対象になる。
さらに暗号資産マイニングについては、既存プロジェクトの全面的な整理・閉鎖を求め、新規のマイニング事業やマイニング機器の国内販売・提供を厳禁とする姿勢を改めて強調されている。
なお、今回の通知は公布日から即日施行され、2021年に発表された暗号資産取引リスク防止に関する通知は同時に廃止された。中国当局は引き続き厳しい監督姿勢を維持し、金融秩序と社会安定の確保を最優先に対応していくとしている。
なお今回の通知に先立ち、中国証券監督管理委員会(CSRC)は2024年9月、一部の中国系証券会社に対し、香港におけるRWAトークン化事業を一時停止するよう非公式に要請したと報じられている。
また2024年10月には、中国のテック大手アリババ(Alibaba)傘下のアント・グループ(Ant Group)や、EC大手JDドットコム(JD.com)などが、民間主体による通貨発行の拡大に対する政府の懸念を受け、香港で検討していたステーブルコイン発行計画を停止したと報じられていた。
事情に詳しい関係者によると、各社は中国人民銀行や国家インターネット情報弁公室(CAC)などの当局から「計画を前進させないように」との指示を受け、ステーブルコイン事業を見送ったとされている。
参考:発表
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