ブロックチェーン分析企業チェイナリシス ジャパンは16日、「2026年 暗号資産犯罪動向調査レポート」の日本語版を公開した。同レポートによると、2025年に不正な活動に利用されるアドレスが受け取った資金は少なくとも1,540億ドル(約24兆5,500億円)に達し、前年比162%増となった。このうち84%をステーブルコインが占めたという。
北朝鮮関連のハッカーによる2025年の暗号資産窃取額は、前年比51%増の20億2,000万ドルに達した。この金額はハッキング被害全体の76%に相当し、2016年からの累計では67億5,000万ドルに上る。同レポートは攻撃手法の巧妙化にも言及しており、IT労働者を装って暗号資産関連の企業に潜入し内部からシステムへ不正にアクセスする手口や、経営幹部を標的にした高度ななりすましが主な手法として報告されている。
暗号資産関連の詐欺被害も拡大している。2025年の詐欺被害総額は約170億ドルに上り、うち140億ドルがオンチェーン上で受け取られた。その中でも、AIを活用した詐欺も深刻で、1件あたりの被害額は従来の詐欺の4.5倍に達した。同レポートによると、ディープフェイクやAI生成コンテンツ、なりすまし状態を提供するオンラインサービスの広がりにより、詐欺の手口そのものが産業化している実態も明らかになったという。
日本国内にも暗号資産犯罪の影響は及んでいる。警察庁の2025年統計では詐欺被害の総額が3,241億円に上り、チェイナリシス ジャパンの推計では、2025年に日本の主要暗号資産取引所から送金された、詐欺被害に関連するとみられる暗号資産は約1,219億円に上り、被害総額の約38%に相当する規模であるとのこと。同レポートでは、詐欺被害金の相当な割合が国内取引所を経由して犯罪収益として隠匿・洗浄されている実態を指摘しており、日本の規制当局や法執行機関・金融機関が暗号資産に特化した詐欺検知・被害抑止能力を備える必要性を強調している。
世界的には、制裁対象団体への送金も1,040億ドルに急増している。ロシアのルーブル担保型ステーブルコイン「A7A5」を経由した取引だけで933億ドルが処理されており、制裁回避の手段としてステーブルコインが広く利用されている構図が鮮明となった。
チェイナリシス・ジャパンのプリンシパル・ソリューション・アーキテクトである重川隼人氏は、同レポートについて「国内の法執行機関や規制当局、民間セクターが、詐欺や北朝鮮関連のハッキングなど国家安全保障・消費者保護に対する脅威への具体的な対策を積極的に取っていくための羅針盤となる」と述べている。
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